デザインかアートか?

 経営者の方は、デザインというと、何をイメージしますでしょうか?良く聞く言葉は、デザインは相手のことを考えて作ると言われています。ここ20年くらいを振り返って見ると、10年くらい前までは、見た目を美しくするだけで、差別化ができて、モノが売れるようになる時代がありました。その後、全体的にデザインの品質が上がってきたため、売るモノやサービスに、物語というストーリーを付けることで、他と差別化を図ってきました。しかしながら、現在は、物凄い情報化社会になったため、差別化を図ったことも、そんな時間も待たずに、多くの人たちが知り、追随して同じようなことをするようになり、違いを出すことが難しくなってしまいました。
 そもそも、デザインとは英語で設計という意味があります。これは何を意味するかと言うと、モノやサービスを、過去から積み重ねた常識や理論、技術等を背景に、論理的な思考で作っていくものなので、答えが同じようなものになってしまいます。例えば、色々な会社案内のホームページを見ると、違う人がサイト制作をしているのに、同じような作りになっていることが多いことに、気付かれている方もいるかもしれません。
 では、アートというと経営者の方は、何をイメージしますでしょうか?よく聞く言葉は、アートは自分のことを考えて創ると言われています。ピカソやダリの絵画や、建築家の安藤忠雄さんの作品なら、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。安藤さんは、自ら自分の設計した建物は住みにくいと話しています。アートは、より自分自身を主張するので、個性的になり、デザインは、個性がなくなる傾向にあります。
 実際、ビジネスの世界では、できるだけ多くの人に愛されたいために、デザインを優先させていきます。なぜなら、個性がないから嫌われる可能性が低くなります。それに、相手のことを中心に考えた方が、売れる可能性が高くなると考えます。しかしながら、モノやサービスが既に溢れている現代社会で、デザインという枠組みの中で、差別化を図ろうとずっと考えていると、いずれ疲弊してしまうのではないでしょうか?
 私自身も、美術大学で、デザインとアートの両方を学びました。そこで感じたことは、もはや、デザインだ、アートだと分けて考えるのではなく、デザインもアートも、同じ枠組みの中で捉えていかなければ、本当に新しいモノやサービスを生み出すことは、難しいのではないか、という答えになりました。この発想は、経営課題を解決するためにも、とても大切な捉え方だとおもいます。経営者の方の、柔軟な創造力が、ご自分の会社を救うことになります。もし、創造することが苦手であれば、得意な方を探して、補佐していただいてください。きっと解決の糸口が見つかります。